こんにちわ、わらびです。
スラウェシ島の山岳地帯に暮らすトラジャ族。
この方々を有名たらしめているのは、ランブソロという盛大な葬儀なのですが、彼らの死後の考え方も反映されているお墓や埋葬方法も非常に個性的で興味深い。
時代や階級、年齢によりそれぞれ異なるトラジャ族のお墓なんですが、今回はその中の一つである、貴族のお墓ボリについて紹介していきます。
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貴族の墓「ボリ」

ランテパオの北にある「ボリの墓」。
ここは、レモの墓と同じ岩窟墳墓なので、社会的地位の高い人間の墓。分かりやすく言えば、トラジャ族における貴族階級の人のためのお墓です。
そのため、他の墓には見られない、生贄の数に応じて建てられた死者の権威を示す石柱があります。
また、お墓自体も岩窟墳墓といえど、岩壁ではなく石自体をくり抜いて作られたという非常に珍しいお墓でもあります。
タナトラジャでは有名な観光スポットなので、ここにも確実に訪れることとなるでしょう。
世にも珍しい岩のお墓

さて、このボリの墓。
レモと同じく貴族階級の墓で岩窟墳墓ではあるものの、レモとは違い、岩壁ではなく大きな岩に墓穴が彫られています。
トラジャの埋葬法は、土地の節約のためにとても理にかなった方法となっていて、本来使いのない土地や物を巧みに有効活用しています。
当然これもその一つ。
ボリ周辺にはいくつも大岩が転がっていますが、どれも墓として利用されています。


大型重機を使えば動かせてしまえそうな大岩。
岩山や岩壁をくりぬいて作られた岩窟墓は世界各地にあり、言ってしまえばそこまで珍しいものではありません。
しかしこのボリの墓は地形を利用するのではなく、動かすことも可能な数メートルの大岩をくりぬいて作られた世にも珍しい…、何と言うのでしょうね?
岩窟墓ならぬ岩石墓なのかな?
まあとにかく珍しいお墓なのである。
岩が墓標になることがあっても、岩自体が墓として機能するなんて。
果たして、未だかつてここまで岩を有効活用できた民族がいただろうか?


ボリでは一番大きな墓。
縦5m、横は大体7,8mくらいの大岩に十を超える墓が掘られています。

あの手この手で穴を掘ろうにも、側面から掘ってしまうと正面から掘った穴にかち合ってしまうので、側面には低い位置に掘られた墓が二つのみ。

ここもレモの墓と同じく圧倒的なスペース不足。
この大岩に掘れる穴の数は限られているので、場所の節約のため墓が一杯になったら、古いものから取り出し一カ所にまとめておく。これも側面に彫られています。

もうだいぶスペースは少なくなってきているものの、まだ新しい穴が増えるそうで、このバツ印の所に新しい穴が掘られる予定。
おそらくこれがこの大岩に掘られる最後の墓になるんじゃないでしょうか?
生贄の石柱(シアンボン)

ボリの岩石を掘って作られた墓も非常に珍しいのですけど、こちらもタナトラジャでは希少な石柱のある広場。
ここは、「シアンボン」と呼ばれる場所で、ランブソロで最低でも24匹以上の牛を生贄に捧げた人のみが建てることを許された石柱がたくさん並んでいます。
ここに柱を建てるには、牛の数だけではなく高価なアルビノの牛も2匹以上捧げるのが条件らしい。
ちなみにこの石柱は、地位の高い人のランブソロでは会場に直接建てられていたりもする。


タナトラジャ滞在中に訪れたランブソロでは2匹のアルビノの牛がいたし、会場にも石柱を建てていたので、おそらく貴族かそれに近い身分の人だったのでしょう。
少なくとも、トラジャ族では石柱=貴族階級の証のようだ。
ちなみに、ここにある最も大きい石柱は96匹の牛を生贄に捧げた時のものらしい。


正直どれが96匹生贄に捧げた石柱か分からないけど、おそらく最も高いであろうこの石柱かと思われます。
赤子の木葬

ボリの墓のすぐ近くには幼児の埋葬された木もあります。
この文化は、現在は廃れて行われていないそうで、最も新しいものでも2、30年前ほどだそうです。

木の育成速度がどんなものか分かりませんが、地上から5mほどの場所にあるのでそれなりに古いものなのでしょう。
木が成長する過程で、他の樹木に巻き込まれて扉が歪んでいたりもするし、ガイドに聞いても詳しい年代は分からないと言っていました。
赤子の木葬は、認知されたものが殆どだとは思いますが、その特殊性ゆえに、忘れ去られたものもあるのかもしれません。
ランブソロの舞台裏
ボリの観光中に、偶然すぐ近くのお宅でランブソロが行われていたので軽く見学することに。


坂の上から流れ落ちる血。
なかなかにショッキングな光景である。
トラジャ族の人々は、ランブソロで生贄の血が流れて初めて死を迎えるとされている。


ランブソロは村の専用スペースで行うこともあるそうだが、ここの場合は、家の庭らしき場所が会場となっていました。

会場は非常に落ち着いた様子で、そもそも客もいなければ葬儀すら行っていない。
ランブソロは数日にわたり開催されるが、その間ずっと何かしらの催し物が行われるわけではなく、午後になると客は帰り、後は翌日の準備などに切り替わるようだ。

会場の中央では男たちが手際よく水牛を捌いている。
トラジャ族の人たちは、業者でもないのに一から牛を捌けるのだ。普通にすごいと思う。

なんだか特殊な形の鍋で調理。
翌日の参列者たちに振舞われるのだろうか?

ランブソロでは定番料理の豚肉の香草焼き。

このように笹の葉にくるんで竹筒に突っ込んで焼いて作るみたいです。
ちなみに豚肉に混ぜる香草は、この会場では調理場のすぐ近くに生えているものを引っこ抜いて使っているみたいでした。
普通の観光客は、午前の葬儀パートのみでこういった準備中の様子は見ることはないでしょうし、期せずしてランブソロの舞台裏を観ることが出来ましたとさ。
おわり
一言にお墓といっても、トラジャ族のお墓は年齢や階級、時代、そして場所によっても異なるためどれも特徴的で面白い。特にボリは、生贄の石柱と岩石墓は唯一無二といっても過言ではないくらいの珍しさ。
タナトラジャ観光では是非とも足を運んでほしいものです。
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