こんにちは、わらびです。
イランに来てからはや1月。
最大の山場イスファハーン観光も終え次にやって来たのは「シューシュタル」。
あまり聞き馴染みのない地名だろうが、ペルシャ人がイラン高原を支配する以前に古代オリエントでブイブイ言わせていたエラム王国の首都があったりする歴史の深いエリア。
世界遺産が密集している地域でもあるので、意外と観光向けの街。
街に来てすぐさま郊外にある世界遺産のチョガー・ザンビールへ。そしてお次も街の中心にある別の世界遺産の観光へと向かいます。
- テヘラン
- コム
- カーシャーン
- ヤズド
- ケルマーン
- マシュハド
- シーラーズ
- イスファハーン
- シューシュタル
- ケルマーンシャー
- ウラマナト
- アルダビール
- タブリーズ
この記事の情報は2023年5月時点でのものになります。
水利都市シューシュタル
「シューシュタル」は、紀元前5世紀アケメネス朝ペルシアのダレイオス1世がパサルダガエから遷都した首都「スーサ」を起源に持つ都市。
「シューシュタル|شوشتر」という名前は、「スーサ|شوش」を比較級にしたもので「より大きい」とか「優れた、立派な」という意味を持つ。
つまりスーサの上位互換に当たる街。
この街で最大の特徴なのが、紀元3世紀ササン朝ペルシアの治世に作られた高度な利水システム。街の中心を流れるカールーン川の水を灌漑、戦時の水の確保、各家屋への水の供給、水車を用いて製粉も行っていました。
「シューシュタルの歴史的水利システム」として世界遺産に登録。
ついでに、イランには「ペルシア式カナート」という地下水路も世界遺産に登録されているが、この利水施設ではそれと同様の技術が使われている。
世界遺産には郊外にある城や橋も一緒に登録されているのだが、この日は気温40℃。クソ暑いので中心部にある水車場だけ見に行きます。
シューシュタルの歴史的水利システム
シューシュタルの中心、カールーン川の流れを堰き止めるようにして作られたダムがある。実際は水を貯めているのではなく、ここで川の流れを複数に分け、さらにそれを細かく枝分かれさせ水車を回し製粉に利用している施設。
シューシュタルの歴史的利水システムは複数の構成資産からなる世界遺産だけど、ここは観光客が一番多く訪れる場所でもある。
営業時間・入場料
入場料は1,000,000IRR
※50万リヤル=1USD
営業時間は変則的で午前は8:00~12:00、午後は17:00から再オープン。
やたらお昼の休業時間が長いですが、この地域では正午から夕方にかけては気温がとんでもなく高くなるのでその間はお休み。
気温40℃の中、水利システムのあるダムまで歩いて行ったらなんと閉まっていたんですね。
なるほどね、しかしこの利水施設は涼をとる場所という側面もあるため、クソ暑い昼にこそ開けてしかるべきなのではないだろうか?
シューシュタルのグルメ
わざわざ足を運んだというのに肩透かしを食らい、昼食がまだだったということもあり地元の有名店「Mostofi restaurant shushtar」へ。
屋外席もあるがクッソ暑いので冷房の効いた室内で。
店員に聞いて頼んだご当地グルメの「シューシュタル・ゴルメサブジー」
普通のゴルメサブジーとの違いは、シューシュタル近隣でしか栽培されていない伝統的な豆とカールーン川で獲れるマスを使っているとこ。
それと付け合わせの漬物がちょっと多いんじゃない?というぐらいついてくる。これは水の豊富なシューシュタルでは野菜の生産が盛んに行われ、その野菜を使った漬物が特産品だからである。
バザールに行くとそこかしこで大量の漬物が積まれている光景を目にする。
お土産に是非。
野菜の中にはフライされたお魚さんが埋没している。
魚や特殊な豆が入っている以外は美味しい?ゴルメサブジー、こんなことを言うのもなんだが私はこのゴルメサブジーという料理が好きではない。
なので真っ当な判断を下すことはできない。
水利施設観光
夕方5時再びオープンした水利施設に。
この頃になると気温も30℃くらいまで落ちてくる。
周囲には崖から流れ出る水路がいくつか見えます。
これはもともとあった自然地形ではなく岩盤を掘って作られた人工的な水路(カナート)。こうした水路を利用して一般家庭まで水を届けていたというわけ。
凄いですね、3世紀の時点で各家庭まで水を供給する水道があったなんて。
私の住んでいた青森県では、21世紀でも家から数時間かけて水を汲みに行くのが普通。
下まで降りると水圧で微風が起き、飛沫の混じったひんやりしたとした空気が肌を撫でる。体感温度が10℃くらい下がったような感覚。
少なくともここで夜を明かしたら風邪をひくだろう
そんな訳の分からない感想を抱いた。
この施設はダムの中の水車場と中央に浮かぶ島のような部分に分かれていますが、2023年当時は崖崩れの修繕作業の影響で中央の島部分には入れませんでした。
必然的に観光は地下の水車場のみに限定。
ここでは水力を利用して臼を回し、1日に14トンも製粉できたそうです。
しかし、思ってたのとなんか違うような。
私のイメージとしては「荒れ狂う川を治めた男たちの闘い」みたいのを想像していたのですが、よくよく考えたらそれは治水、ダムとか堤防の方。
こっちは利水で水の力を利用して水車とか回すやつ。
何か変な勘違いをしていたようですね。
中は別に広くもないし臼と水車の歯車しか残っていないので30分ほど涼んだら観光はお終い。
夜景もお見逃しなく
水車場は夜になるとライトアップされるのですが、その時の夜景が凄く綺麗。
西の崖の上には展望台があるのでそこから見るのがおススメ。
ここで夜景を見ていると、突然ガイドをしているという女性に話しかけられました。
「何か知りたいことが無いか」とか「泊っている場所は?」とかいろいろと質問され、最終的に「ホテルまで案内するからついてきて」となり、途中スーパーで買い物してからホテルまで送り届けてくれ金銭も要求せずに帰っていきました。
結局何だったんだろう?
真相は謎のままですが、ただの優しいイラン人という線が濃厚です。
カプ織り
水利施設の入り口にはお土産屋があります。
このお土産屋は、シューシュタルの伝統工芸のひとつ「カプ織り|کپوبافی」を取り扱う専門店、その場で職人が作っているので工房も兼ねています。
カプ織りというのは、乾燥させた植物の茎を編んだものでカゴや鍋敷きスタイルのものが多くあります。
こちらの手のひらサイズのカプ織り、糸を巻き模様を付けた手の込んだ作品ですがたったの1ドル。
お土産を買ったら工房の小窓から水利施設を見せてくれました。
おわり
「荒れ狂う川を治めた男たち」みたいなプロジェクトX的なのを想像していたら、実は水車で製粉してましたっていうことだった歴史的水利システム。
まあこれは私の一方的な勘違いでしたが、いつか故郷にも各家庭まで水道をいきわたらせる水利システムを作りたいものです。