こんにちわ、わらびです。
古代エジプトの遺跡を巡るナイル川南下もこれで最後。
エジプトの南端の辺境の地に作られた巨大な岩窟神殿「アブ・シンベル神殿」。
今でこそ有名な世界遺産というものも、この神殿を水没の危機から救い出すプロジェクトがきっかけで誕生しました。
この記事の情報は2023年8月時点でのものになります。
- カイロ
- ルクソール
- アスワン
- ダハブ、フルガダ
- シワ
もくじ
アブ・シンベル神殿
エジプトの歴史上もっとも偉大な王ラムセス2世。
カルナック神殿やルクソール神殿にも巨像が何体もあることから分かるように、ラムセス2世は非常に自己顕示欲が強い人物とされています。
中でも彼の顕示欲が最も顕著に表れているのが「アブ・シンベル神殿」。
アスワンハイダムの建設によりダムの底に沈む運命にあり、この遺跡を救うためにユネスコの協力のもと世界規模のキャンペーンが行われました。
その結果、世界遺産条約が誕生したというのは有名な話。
世界遺産第一号が1978年に登録され、アブシンベル神殿が登録されたのがその翌年の1979年。
残念ながら第一号の登録にはなりませんでしたが、この神殿がきっかけで世界遺産条約が誕生したのは紛れもない事実。
まさに元祖世界遺産なんです。
世界遺産「アブシンベルからフィラエまでのヌビア神殿群」の構成資産。
移設の方法
アブシンベル神殿の移設方法は世界中から集められ、採用されたのはスウェーデンの案。その方法は遺跡をブロック状に切り分け移設するというのも。
移設が行われたのは1964年から68年にかけての4年間。
大小1036個のブロックに切り分けられた神殿は、60m上の丘の上に移設されそこで再び元の形に組み上げられました。
神殿はもともと岩窟神殿だったため、それを再現するためにコンクリのドームを作り、その内部に神殿がすっぽり収まるようになっています。
背後に回り込むとドームの形がはっきりと分かるようになっていて、ハリボテなどと形容されることも…
遺跡をよく観察してみると、ブロックに切り分けられた跡がしっかりと残っています。
ナセル湖
アブシンベルと切っても切り離せないのがナセル湖。
アスワンハイダムの完成によってナイル川の氾濫のコントロール、農業用水の確保、水力発電による電力供給の安定化と完成直後は一定の経済効果が生まれました。
しかし、ダムの建設によって生まれた全長500kmにも及ぶ巨大なナセル湖によって事態は一変。
蒸発した水が雲となり季節外れの雨を降らせ、砂嵐を巻き起こすなど大きな気候変動を巻き起こしベドウィンの生活にも大きな影響をもたらしました。
農業用水確保のためのダムでありながら、洪水が起こらなくなったため土壌に塩分が溜まってしまい大規模な農地破壊にも繋がっています。
悲しいことに年々デメリットの方が大きくなっているそう。
夏は意外と過ごしやすい
アスワンから南のヌビア地方は夏の日中は40℃を超えるのが当たり前という超酷暑地帯。
しかし、アブシンベル周辺だけに関して言えば夏でもそこまで暑くない。それどころかエジプト内では最も涼しいと言っても過言ではない地域。
何故なら、ナセル湖から蒸発した水が厚い霧となって太陽光を遮るため体感気温は35℃前後。時には季節外れの雨を降らしたりもするというから驚きです。
強烈な日差しも遮るので夏でもそこまで苦にはなりません。
営業時間と入場料
- 営業時間・5:00~18:00
- ライトアップショーが18:30~、19:30の二度
- 料金・415EGP
※ライトアップショーの最少催行人数は10名なので夏季は人数が集まらないこともある。
エジプト観光ではVISAカードが必須
強烈な外貨不足に悩まされるエジプトでは、外貨獲得のために、2023年からは政府が運営する観光施設では現金での支払いが禁止されています。
入場料の支払いはすべてVISAカードでのみ可能となっており、他のブランドは使用不可。
冗談抜きでVISAカード無しでは大半の観光施設には入場できないというのが現状です。
アブ・シンベル神殿の見どころ
4体のラムセス2世像
アブシンベル神殿といえばこの正面からのアングル。
4体ものラムセス2世像が並ぶ光景は圧巻で非常に有名。ガイドブックの表紙なんかにもなっているやつですね。
エジプトといえばピラミッドかアブシンベルといった感じ。
非常に自己顕示欲が強くエジプト各地に自分の像を作らせたラムセス2世。エジプト王朝の歴史上もっとも偉大な王だからこそ出来ること。
同じ人物の像が4つも並んでいますが、蒐集家の言う所の観賞用、保存用、布教用、予備の予備という訳ではないんです。
これらはラムセス2世の青年期から壮年期にかけての姿を模ったもので顔つきが微妙に異なります。
左から2番目の像は上半身が崩落しています。これは地震の被害によるものだそう。
ラムセス2世が知ったらブチ切れそうなものですね。
周囲に観光客がほとんどいないので記念に自撮り。
近くにいる警備員に頼むとお金がかかるので、カバンにスマートフォンを立てかけタイマー撮影。
ちょっと斜めだし一番左の像が見切れている。
これが無料版の限界。
もっと良い写真を撮りたい方は近くの警備員に課金して下さい。
ラムセス2世の雄姿を描いたレリーフ
ラムセス2世の治世で最も有名なのがシリアを巡って行われたヒッタイトとの抗争。
カデシュの戦いと呼ばれるこの戦争で両国間の決着はつかなかったものの、歴史上初となる平和条約が結ばれたことでも有名です。
神殿内の列柱室にはカデシュの戦いにおけるラムセス2世の雄姿が多く描かれています。
戦車(チャリオット)に乗って戦場をかけるラムセス2世。
捕えたヒッタイト兵を討つラムセス2世。
実際にこのようなことをしていたかは謎ですが、エジプトの南端の僻地にすらこのような巨大神殿を建設させたことからラムセス2世の圧倒的な権力が伺い知れます。
当然と言えば当然ですが、列柱にはそれぞれラムセス2世の像がセットで作られています。
レリーフに列柱、とにかくラムセス2世だらけ。
これを現代に置き換えてみると、部屋の中が自分の写真で一杯みたいな感じでしょうか?
ストーカーの部屋の壁一面が執着対象の写真で一杯だなんてことは創作などでよくありがちなことですが、事実は小説より奇なりとは正にこのこと。
至聖所
遺跡の一番奥の至聖所には4体の神像があり、左からプタハ神、アムン・ラー神、神格化されたラムセス2世、ラー・ホルアクティ神の順に並んでいます。
至聖所には年2回光が差し込む計算で建設されましたが、もとの位置から移設された影響で現在はうまく光が差し込まないそうです。
なんだかサウナに入っている人達みたい?
アブ・シンベル小神殿
大きい方ばかり有名であまり話題にならないこっちの小さい「アブ・シンベル小神殿」。
ラムセス2世が妻の「ネフェルタリ」に捧げ作ったもの。この遺跡も大神殿同様ブロック状に切り分けられ丘の上へと移設されました。
中央から左右に3体ずつ巨像が彫られ、真ん中に位置するのがネフェルタリで両サイドをラムセス2世の像に挟まれています。
内部はこのような感じです。
おわり
元祖世界遺産のアブ・シンベル神殿。
エジプト最南端という辺鄙なところにありますが、是非ともその目に焼き付けたいところ。
人類の貴重な歴史的遺産の保護と引き換えに起きた、現在も徐々深刻化する環境破壊もお見逃しなく。