エジプト初の女性ファラオが祀られるハトシェプスト女王葬祭殿

こんばんは!わらびです。

東岸ではルクソール神殿カルナック神殿の2か所を観光。

続く西岸観光では2日に分けてハトシェプスト女王葬祭殿、王家の谷、王妃の谷(ネフェルタリの墓)、ラムセス3世葬祭殿を観光していきます。

まずは1カ所目のハトシェプスト女王葬祭殿観光から。

この記事の情報は2023年8月時点でのものになります。

ハトシェプスト女王葬祭殿

ルクソール西岸、古代テーベの時代から「死者の世界」と考えられ、生者の世界である東岸とは対極に多くの墓地や葬祭殿が作られました。

ツタンカーメンの墓が発見された王家の谷から東の崖の下にあるのがエジプト初の女性ファラオを祀った「ハトシェプスト女王葬祭殿」。

1997年のルクソール事件では、邦人10名を含め多くの観光客が亡くなった現場でもあります。

世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」の構成資産。

アクセス

ハトシェプスト女王葬祭殿までのアクセスは自力で行く場合はタクシーが基本。

西岸のフェリー乗り場から往復+1時間の待機時間を含め100~150EGPが目安。

西岸地区での移動方法は下の記事から■
ルクソール西岸と王家の谷へのアクセス方法【おすすめの交通手段・値下げ交渉のコツ】

チケットカウンター前から葬祭殿までは500mほど。

歩いて行くことも可能ですが5EGPの有料の電動カートも使用できます。

入場料と営業時間

営業時間、6:00~17:00
入場料、240EGP

エジプト観光ではVISAカードが必須

強烈な外貨不足に悩まされるエジプトでは、外貨獲得のために、2023年からは政府が運営する観光施設では現金での支払いが禁止されています。

入場料の支払いはすべてVISAカードでのみ可能となっており、他のブランドは使用不可。

冗談抜きでVISAカード無しでは大半の観光施設には入場できないというのが現状です。

ハトシェプスト女王葬祭殿の見どころ

王家の谷の近くにあるのでセットで観光されることの多いハトシェプスト女王葬祭殿。

1時間ほどあれば隅から隅まで見て周ることが可能。そこまで広くはないので、急いでいる場合は30分ほどでも見学時間は充分です。

エジプト初の女性ファラオ「ハトシェプスト」

ハトシェプスト女王葬祭殿を観光する上で欠かせない情報がここに祀られている「ハトシェプスト女王」という人間について。

ハトシェプスト女王は、エジプト王朝では初めてファラオになった女性で、古代エジプト第18王朝のファラオ「トトメス2世」の妻。

夫のトトメス2世は遺言で、側室であるイシスとの間に生まれた「トトメス3世」を後継者に指名しましたが、トトメス3世がまだ幼かったということもあり、継母であるハトシェプストが幼い彼に変わり摂政として共同統治者となりました。

古代エジプトでは新王がまだ幼かった場合は王妃が共同統治を担うのが一般的でしたが、ハトシェプストは当初から実権を握り、数年後にはエジプト初の女性ファラオとして君臨することになります。

エジプト考古学博物館のハトシェプスト女王像

彼女が前例のない女性ファラオになることができたのは、古代エジプトでは血筋が非常に重要視され、彼女が王家の血筋を引く人間だったということがあげられます。

ハトシェプスト女王の統治はトトメス3世との共同統治という形で22年に及び、治世においては平和的政策を摂り、プント国(ソマリア)との交易に力を入れエジプトに富をもたらしました。

エジプトの歴史上権力を持った王妃は何名もいましたが、女性としてファラオになるのは極めて稀。

男の力が絶大だった時代に女性でありながら王となった異例のファラオ。それ故に快く思わなかった者も多くいたとされます。

風変わりな外観

ハトシェプスト女王葬祭殿でまず驚くのがその外観。

古代エジプトの神殿といえば、入り口には巨大な像や塔門が待ち構えその奥に何本もの柱が立ち並ぶというのが一般的。

しかしこの葬祭殿は、これが古代の女王と神を祀った神殿とは思えない、オシャレな公共施設でもおかしくないくらいの見た目をしています。

少なくとも現代の街中に溶け込めるんじゃないかというくらいモダンな外観。中央の階段などはいかにもバリアフリー設計ではありませんか?

さしずめ、陽の光を多く取りこんだ見晴らしの良い図書館的といったところ。

ハトシェプスト像

一階から階段を登るとそこから両脇にハトシェプスト女王の顔をしたオシリス神像が並んでいます。

ハトシェプスト女王は「男装のファラオ」とも呼ばれ、公共の場では付け髭をし、あくまでも男として振舞ったとされています。

葬祭殿にあるオシリス神像にもしっかりと顎髭が付けられています。

ファラオが女性であるという周囲の不安、それに対するハトシェプスト女王の苦悩や王として生きる決意が見て取れるような気がします。

削られたレリーフ

葬祭殿の1階には彩色の残ったレリーフが何ヵ所もあります。

そして、その中には劣化とは違い不自然に削り取られた跡が何ヵ所も。

この不自然に削り取られた跡にはかつてハトシェプスト女王が描かれていたとされます。

何故こんなことになってしまったのか?

ハトシェプストは、エジプト王朝の歴史上前例のなかった女性ファラオ。

男の力が絶大だった時代において、女性に実権を握られるなど共同統治を担ったトトメス3世からしてみれば、女に劣る王と周囲から思われているのではないかと気が気ではなかったかもしれません。

そのためトトメス3世が後に壁画を削り取ったという説が有力とされています。

ちなみに、東岸地区にあるカルナック神殿でも同様に、ハトシェプスト女王の壁画が削り取られています。

後任の王が前任の王を快く思わず、記録から抹消してしまうということは珍しくありません。

一方で、実際には両人の中はあくまで良好だったとされ、彼女に敵対心を抱いていた別の者がやったのではないかと様々な仮説が立てられています。

まさに歴史ミステリー。

プント交易の彩色画

一階の北柱廊にはハトシェプストの治世では特に力を入れて行われたプント交易の壁画があります。

掠れてだいぶ薄くはなっているものの、一部彩色が残っている場所も残っており、プントの景色や紅海を渡る船団の様子が描かれています。

これは紅海のお魚さんをあらわしているのかな?

天井にはヒトデのような大量の模様。これは夜空を模したもので保存状態は良好。

やはりどの神殿でも、太陽や風に晒されることのない天井部分が最も状態が良く保存されています。

至聖所

葬祭殿の最上段の奥にある至聖所。

最上段の神殿はトトメス3聖、もしくは他の者によって破壊されてしまいましたが、その奥にある至聖所は現存しています。

夜空の星を描いた彩色がもしっかりと残されています。

おわり

前例のない女性ファラオとして道を切り拓いただけではなく、同性愛者だったんじゃないかという説もあって、何者かに壁画を削られたりとエピソードに事欠かないハトシェプスト女王。

その上葬祭殿まで風変わりな作りというおもしれー女。