こんにちわ。わらびです。
アンコール遺跡の寺院には、美しく精密なレリーフが数多くあり、大きな見どころの一つになっています。そんな中飾り気の一切ない武骨な姿をしている、ほとんど装飾が施されていないのが「タ・ケウ寺院」です。
遠目には巨大で迫力満点ですが、近づくと驚くほど装飾が少なく、まるで石の塊のような姿をしています。
実はこの寺院、建設途中で工事が中断され、未完成のまま1000年以上が経過したという珍しい遺跡なのです。
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タ・ケウ寺院とは?

「タ・ケウ寺院」10世紀末から11世紀初頭にかけて、ジャヤヴァルマン5世によって国家鎮護寺院として建設が始められました。
寺院はヒンドゥー教の最高神であるシヴァ神に捧げられたもので、高さ約22mの五層ピラミッド型、ヒンドゥー教の世界観における聖なる山「須弥山」を表現しています。
また、アンコール・ワット建造の前段階、つまりは実験・練習として建造されたとも推測され、後に受け継がれる建築技術の発展を知るうえでも重要な存在です。
しかし、建設途中で工事が突然中断され、装飾が施されないまま未完成となりました。


そのため、現在でも石材の加工跡や建設途中の様子がそのまま残されており、完成した寺院では見られない貴重な姿を観察できます。
未完成の理由

タ・ケウ寺院最大の特徴は、装飾がほとんど施されていないこと。
柱や壁には下書きのような跡だけが残り、完成していれば彫刻されていたであろう面が、そのまま露出しています。
では、なぜ工事は止まってしまったのでしょうか?
実は詳細な記録が残されていないので明確な理由は分かっていません。有力な説は次の3つが挙げられます。
①雷が落ち不吉な寺院と考えられた
アンコール遺跡群は、大半の寺院が周囲の木々よりも高く作られているので、落雷する確率が高くなっています。
そしてタ・ケウでは建設途中、寺院に落雷があったという記録が残されています。
当時のクメール王朝では、雷は神々からの警告や不吉な前兆と受け止められることがありました。そのため、この出来事を凶兆と判断し、寺院の建設が中止されたという言い伝えがあります。
②石が硬すぎた
タ・ケウ寺院は、鉄やアルミニウムを主成分とする、硬質なラテライトで造られています。
巨大な石材を積み上げることには成功したものの、石材が硬すぎたため細かな彫刻を施すには膨大な時間が必要になり、途中で断念した可能性も指摘されています。
他の遺跡では基礎部分にラテライト、装飾を施す表面に砂岩を用いているため、もしかしたらタ・ケウ寺院での失敗を活かしているのかもしれません。
③王の急逝
タ・ケウ寺院は、ジャヤヴァルマン5世によって建立が始められました。しかし王が亡くなると、後継の王は自らの寺院建設を優先したと考えられています。
クメール王朝では、新しい王が自らの国家寺院を建立することが権威の象徴でもありました。そのため、タ・ケウ寺院への資金や人員は次第に別の建設事業へ移され、結果として未完成のまま残されたと考えられています。
寺院の見どころ
タ・ケウ寺院は、アンコール遺跡群の中では比較的シンプルな寺院です。未完成のまま建設が中断されたため、他の寺院で見られるような精巧なレリーフや装飾彫刻はほとんど残されていません。
そのため、観光の所要時間は30分ほどあれば十分でしょう。
要塞のような寺院
一方で、装飾がないからこそ際立つのが、その無骨な外観です。急峻なピラミッド状の構造と、巨大な石が積み重なる姿は、まるで要塞のような迫力があります。


タ・ケウ寺院は、その武骨な外観からしばし「要塞のような寺院」と表現されることがあります。
しかし、これは単なる比喩ではありません。実際にタ・ケウ寺院は、防衛機能を備えた要塞寺院として建設されていたのかもしれないのです。
クメール王朝では、地方や村落に建てられた寺院は信仰の場であると同時に、有事の際には防衛拠点としての役割も担っていました。そのため、一番外側の回廊には外へ通じる窓を設けず、「偽窓」と呼ばれる装飾だけの窓が並べられています。
外部から見ると閉鎖的で威圧感のある造りですが、内側の回廊には実際の窓が設けられており、内部は比較的開放的な空間となっています。




このように、外には閉じ、内には開くという構造は、防衛面でも非常に合理的。
外から見れば堅く閉ざされた印象を与え、内部の様子を容易にうかがうことはできません。一方、内部では回廊を介して各所の連携が取りやすく、防衛拠点としても機能する造りとなっています。
宗教的な思想と防衛機能を見事に融合させた建築その設計思想は、タ・ケウ寺院にも色濃く表れています。

タ・ケウ寺院が作られた場所も都城の外側なので、防衛拠点として作られていても何ら不思議ではありません。
ですよね?
おわり
アンコール遺跡群には数え切れないほどの寺院がありますが、未完成であることが最大の見どころになっている寺院はタ・ケウくらいでしょう。
完成した寺院では見ることのできない石材や建築工程がそのまま残されているため、まるで1000年前の工事現場を歩いているような気分になります。
アンコール・ワットやバイヨン寺院、タ・プローム寺院ほど知名度は高くありませんが、クメール建築の歴史を知るうえでは外せない場所。時間に余裕がある方は、ぜひ立ち寄ってみてください。
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