こんばんわ、わらびです。
アンコール遺跡といえば、アンコール・ワットやバイヨン寺院を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、美しさという点でしばしばアンコール美術の至宝と称される寺院があります。
それが「バンテアイ・スレイ寺院」です。
小規模な寺院ではありますが、赤い砂岩に刻まれた繊細な彫刻は、千年以上前に造られたとは思えないほど精巧。多くの観光客を魅了し続けています。
今回は、そんなバンテアイ・スレイ寺院の魅力をご紹介します。
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バンテアイ・スレイ寺院とは

バンテアイ・スレイは、967年に建立されたヒンドゥー教寺院です。
建立したのは王ではなく、王師(バラモン)であり国王ラージェンドラヴァルマン2世の側近でもあった「ヤジュニャヴァラーハ」という人物でした。

寺院名の「バンテアイ・スレイ」は「女人の砦」や「女性の城塞」という意味があり、名前の由来ははっきりしていませんが、彫刻があまりにも繊細で女性にしか彫れないと考えられたことや、美しい女性像(デバター)が数多く残されていることに由来するといわれています。
また、この寺院の修復は、アンコール遺跡の保存・修復に生涯を捧げた「アンリ・マルシャル」の代表的な業績であり、彼の数ある功績の中でも最大のものと評価されています。
遺跡自体は小規模ですが、その彫刻の精細さ美しさは全遺跡の中でも群を抜いています。
少々離れた位置にありますが、アンコール観光では必ず押さえておきたい必見スポットです。
アクセス方法とツアー
バンテアイ・スレイはシェムリアップから約40kmほど離れた場所にあり、アクセスには難があります。
道路は舗装されていますがトゥクトゥクや車で約1時間ほど。観光するにはツアーに参加するというのが一般的。
同じくアンコールパスで入場可能なクバール・スピアン、バンテアイ・サムレなどとセットで巡るコースで、料金相場は大体35$~となっています。
バンテアイ・スレイの見どころ
バンテアイ・スレイは、アンコール遺跡の中ではかなり小規模な寺院です。
アンコール・ワットやバイヨンのような巨大な建築物を想像して訪れると、「思ったより小さい」と感じるかもしれません。
しかし、バンテアイ・スレイの魅力は、その大きさではありません。
東洋のモナリザ
バンテアイ・スレイ寺院を語る上で欠かせないのが美しいデバター像です。
寺院の壁面や塔のいたるところに精巧な彫刻が施されていますが、その中でも特に有名なのが、中央祠堂の北側に刻まれたデバター像。
柔らかな表情に、整った顔立ち、そして繊細な装飾。硬い砂岩から彫り出されたとは思えないほど優美な姿をしており、アンコール遺跡の中でも屈指の美しさとされています。
現在は近くから見ることはできないので、しっかり観察したいという方は、双眼鏡や高倍率のカメラを持って行った方がいいかもしれません。



また、その美しさから、フランスの作家・政治家アンドレ・マルローが「東洋のモナ・リザ」と評したことでも知られています。
ただし、この呼び名にはちょっとした裏話があります。
実はマルローは、このデバター像に魅了されすぎたのか、1923年に像を盗み出そうとして逮捕されています。
なんとも大胆な話ですが、それだけ当時からこの像が人を惹きつけるほど魅力的だったということなのでしょう。
アンドレ・マルローとフィクション小説
盗掘未遂で逮捕されたアンドレ・マルロー。
彼はこのカンボジアでの体験をもとに冒険小説「王道」を執筆しました。
この「王道」とは、クメール王朝時代カンボジア各地と王都アンコールを結んでいた交通網のこと。しかし、小説が発表された当時はその存在は確認されておらず、「そのような道があったのではないか」と推測されているに過ぎませんでした。
そのため、マルローは登場人物含め、物語の展開される舞台までもフィクションとして描いています。
ところが、その後の航空写真や衛星画像、さらには本格的な考古学調査によって、クメール王朝時代に広大な道路網が実際に築かれていたことが判明しました。
半世紀以上の時を経て、マルローが小説の舞台として描いた「王道」は、空想ではなく実在した古代の交通網だったことが明らかになったのです。
赤みを帯びた寺院



バンテアイ・スレイを訪れてまず目を引くのが、寺院全体を包み込むような赤褐色の色合いです。
アンコール・ワットなどで使われている灰色がかった砂岩とは異なり、バンテアイ・スレイでは赤みの強い砂岩が多く使われています。
この赤い砂岩は硬く、細かな彫刻を施すのに適していたとされ、そのおかげで現在でも非常に精密なレリーフが残されています。
さらに、太陽の光が当たると砂岩の赤色がより鮮やかに浮かび上がる……はずなのですが、運悪く私が訪れたときはどんよりとした曇り空。
赤い寺院を見に来たというのに、空まで灰色とは。
天気だけはどうにもなりませんね。
超精密なレリーフ
バンテアイ・スレイの最大の見どころといえば、寺院のいたるところに施された驚くほど精密な彫刻です。
アンコール・ワットのような巨大な寺院とは違い、バンテアイ・スレイでは建物そのものよりも、壁面を埋め尽くす細かな装飾に目を奪われます。
特に注目したいのが、ヒンドゥー教の神話を題材にしたレリーフ。


神々や怪物、精霊などが生き生きと彫り込まれており、まるで石の中から今にも動き出してきそうなほどの躍動感があります。
そして何より驚かされるのが、その細かさ。


花びらや植物の蔓、人物の髪や衣装に至るまで立体的に彫り込まれており、本当に石に彫って造ったのか疑いたくなってしまうほど。
しかも、バンテアイ・スレイは比較的小さな寺院なので、巨大なアンコール遺跡を歩き回るような感覚ではなく、一つひとつの彫刻を近くでじっくり眺められるのも魅力です。
小さな寺院ではありますが彫刻に魅入られてしまい、観光には1時間ほど費やしました。
なんとなく、マルローの気持ちが分かったような気もします。
おわり
バンテアイ・スレイは、アンコール・ワットやバイヨンのような巨大な寺院ではありません。
しかし、その小さな寺院に刻まれた彫刻の美しさと精密さは、アンコール遺跡の中でも群を抜いています。
赤みを帯びた砂岩、神話を描いた繊細なレリーフ、そして「東洋のモナ・リザ」と呼ばれるデバター像。
遺跡の価値は、必ずしも大きさでは決まらない。
そんなことを実感させてくれるのが、バンテアイ・スレイでした。













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